【45時間分の残業代?】トヨタの働き方改革「裁量労働制の拡充」

トヨタ自動車が「働き方改革」として、2日に時間に縛られない多様な働き方を促す目的で、裁量労働の対象社員を拡充する方向で労働組合と調整に入った事を明らかにしました。
また、一般職の業務職にも12月から在宅勤務制度を導入して、育児・介護と仕事の両立ができるように支援するとの事。

今回、トヨタが行う裁量労働は、残業時間に関わらず、月45時間分の残業代17万円程度を支給する仕組みとの事です。

このニュースを見た時、「裁量労働制?残業代?」と疑問を持ったのは言うまでもありません。
これは「裁量労働制」ではなく、単純に「固定残業代」だと思ったからです。

裁量労働制とは?

裁量労働制とは、1日あたりの「みなし労働時間」を定めて、実際に働いた時間に関わらず「みなし労働時間」分の仕事をした事にする制度になります。
例えば、「みなし労働時間」が8時間と設定されている場合、1日5分働いただけでも8時間働いた事になり、8時間労働分の賃金が払われる事になります。

労働する人が、決められた労働時間に縛られる事なく、自分で自由に労働時間を決める事のできる働き方で、これだけ聞くと良い制度に思えます。

ただし、「みなし労働時間」が決められてしまうと、いくら追加で残業しても残業代が出ない、など何時間でも追加で働かされる可能性も出てきます。
(36協定を結ぶ必要があるため、本来は残業代が出ます)
また、現実には裁量がなかったり、本来は対象外の労働者に適用していたり、残業代を減らすためだけに悪用されていたりします。

実際に制度が悪用され、問題になった事も世にはたくさんありますので、関係する人は注意した方が良いかもしれません。

裁量労働制の規定

裁量労働制を採用するには、労働基準法第38条の3及び第38条の4の要件を満たす必要があります。
専門的職種・企画管理業務など、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある19の職種である事が必要です。

対象となる19の職種

1.新商品や新技術の研究開発、人文・自然科学に関する研究
2.情報処理システムの分析又は設計
3.新聞・出版事業における記事取材・編集、放送番組の制作のための取材・編集
4.衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案
5.放送番組、映画等の制作のプロデューサー・ディレクター
6.コピーライター
7.システムコンサルタント
8.インテリアコーディネーター
9.ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
10.証券アナリスト
11.金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発
12.大学における教授研究
13.公認会計士
14.弁護士
15.一級建築士、二級建築士及び木造建築士
16.不動産鑑定士
17.弁理士
18.税理士
19.中小企業診断士

給与に関して

極端に言えば、1日5分でも働くと「みなし労働時間」分の賃金は払われますが、逆に「みなし労働時間」を超過した場合は、労使協定を書面で締結し、行政官庁に届を出す、いわゆる36協定が必要になります。

そうする事で時間外労働、深夜労働、休日労働に関しては、割増支給が可能になります。
ただし、管理監督者は、時間外労働、休日労働は適用外になります。

問題になった何件かの事件では、「みなし労働時間」分賃金を払っているから、超過しても残業代を払わなくても良いという、間違った認識から悪用された状態になっていました。

勤務時間に関して

勤務時間は固定されず、出退勤の時間は自由に決める事が可能です。
実務時間の管理も基本的には行われません。

ただし、過重労働や過労死予防のための安全配慮として、2003年から「裁量労働制」利用者に実務時間の記録と管理が義務付けられました。

IT業界の裁量労働制

私は、一応システムエンジニアとしてIT企業に所属していますので、IT業界に関しての裁量労働制についても調べてみました。
19の職種でIT企業も対象にはなっていますが、システムエンジニアは対象で、プログラマーは対象外となっています。

対象になる業種

1.プロジェクトマネージャー
2.システムエンジニア
3.システムコンサルタント
4.デザイナー(創作系の場合)

IT業界の裁量労働制の導入状況

厚生労働省の調べによると、平成24年度時点では、「みなし労働時間制」全体で見ると、導入企業の割合は11.9%となっています。
IT業界においては25%の企業が導入しており、全業種で一番導入の比率が高いように見えます。
それでも、専門業務型裁量労働制になると、導入比率は14.2%に留まっており、導入している企業の内、適用されている社員の比率は7.9%に過ぎないという事がわかりました。
これは、IT業界で働く社員のうち1%程度にしか適用されていないということになります。
上に書いた通り、厚生労働省は、システムエンジニアとシステムコンサルタントに対して、専門業務型裁量労働制の導入を認めていますが、実際に適用されている人はごく僅かという事になります。

最後に

裁量労働制自体は、昭和の時代に作られたものであるにも関わらず、あまり導入はされていません。
専門職・企画職に就いている方に関しては、メリットの多い制度ではありますが、事件にもなっている通り、悪用または認識違いで運用されている企業が多く、あまり良いイメージはありません。

特に忙しいイメージのあるIT企業だと、ブラック企業が多い事もあり、注意した方が良いかもしれません。

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加