2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることが決まりました。
これは、日本の教育史において画期的な出来事と言えるでしょう。
しかし、この必修化に対しては、賛成派と反対派が分かれており、様々な議論が巻き起こっています。
そこで、この記事では、プログラミング教育必修化の背景や目的、国内外の現状や反応、よくある勘違いなどについて解説していきます。
目次
プログラミング教育必修化の背景
プログラミング教育必修化の背景には、主に以下の3つの要因があります。
1)国際社会での競争力の確保
2)人工知能やIoTなどの技術革新への対応
3)豊かな人間性や創造性の育成
まず、国際社会での競争力の確保という観点からは、日本はIT分野で世界に遅れを取っているという認識があります。
実際に、2019年に発表された「デジタル競争力ランキング」では、日本は27位と低い順位にランクされています。
また、OECD加盟国の中では最もIT人材不足が深刻であるという調査結果もあります。このような状況を打破するためには、ITリテラシーを高めることが必要です。
そのためには、小学校からプログラミング教育を行うことが有効だと考えられます。
次に、人工知能やIoTなどの技術革新への対応という観点からは、社会や生活が大きく変化する可能性があります。
例えば、自動運転やスマートシティなどの実現には、プログラミング技術が不可欠です。
また、人工知能やロボットが多くの仕事を代替する可能性もあります。
このような時代に生きる子どもたちには、プログラミング技術だけでなく、プログラミング的思考や問題解決能力も必要です。
そのためには、小学校からプログラミング教育を行うことが有効だと考えられます。
豊かな人間性や創造性の育成という観点からは、プログラミング教育は単なる技術教育ではありません。
プログラミング教育では、自分のアイデアを形にすることや他者と協働することなどが求められます。
これらは、子どもたちの表現力やコミュニケーション力を高める効果があります。
また、プログラミング教育では、論理的思考や創造的思考を鍛えることもできます。
これらは、子どもたちの思考力や判断力を高める効果があります。
そのためには、小学校からプログラミング教育を行うことが有効だと考えられます。
国内のプログラミング教育の現状
国内のプログラミング教育の現状は、まだまだ発展途上と言えます。
2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化されることになりましたが、その実施方法や内容は各学校に委ねられています。
文部科学省は、プログラミング教育の手引きや教材を提供していますが、それらはあくまで参考資料であり、義務ではありません。
また、プログラミング教育に必要なICT環境や教員の研修も十分ではないという課題もあります。
一方で、プログラミング教育に積極的に取り組む学校や教員も増えています。
例えば、Scratchやビジュアルプログラミング言語を使って、ゲームやアニメーションを作る授業を行ったり、ロボットやマイクロビットを使って、動きや光り方を制御する授業を行ったりしています。
また、地域のIT企業や大学と連携して、プログラミング教育の支援を受けたり、生徒同士や他校との交流を行ったりしています。
これらの取り組みは、子どもたちの興味や関心を引き出し、学びの深化につながっています。
海外のプログラミング教育の現状
海外のプログラミング教育の現状は、国によって様々ですが、日本よりも先行している国が多いと言えます。
例えば、イギリスでは2014年から小学校でコンピューティングという科目が必修化されており、プログラミング技術だけでなく、コンピュータサイエンスの基礎知識やデジタルリテラシーも教えています。
また、エストニアでは2012年から小学校で「ProgeTiiger」というプログラムを実施しており、ゲームやアプリの開発などを通してプログラミング的思考を育てています。
さらに、シンガポールでは2019年から小学校で「コンピューテーショナル思考」という科目が必修化されており、ビジュアルプログラミング言語やテキストベースのプログラミング言語を使って問題解決能力や創造性を高めています。
これらの国では、プログラミング教育に対する国家的な方針やカリキュラムが明確に示されており、ICT環境や教員の研修も充実しています。
また、民間のIT企業やNPO団体なども積極的に協力しており、多様な教材や支援サービスが提供されています。
これらの取り組みは、子どもたちに高いレベルのプログラミング技術や思考力を教えています。
必修化に対する周囲の反応
プログラミング教育必修化に対する周囲の反応は、賛否両論です。
賛成派の主な意見
・プログラミング教育は、子どもたちに21世紀に必要なスキルや知識を身につけさせることができる。
・プログラミング教育は、子どもたちの自己表現や創造性を高めることができる。
・プログラミング教育は、子どもたちに社会や自然の仕組みや法則を理解させることができる。
・プログラミング教育は、子どもたちに多様な価値観や文化に触れさせることができる。
反対派の主な意見
・プログラミング教育は、子どもたちに過度な負担やストレスをかけることになる。
・プログラミング教育は、子どもたちに本来必要な基礎学力や人間力をおろそかにさせることになる。
・プログラミング教育は、子どもたちにコンピュータに依存するようにさせることになる。
・プログラミング教育は、子どもたちにプログラマー以外の職業への道を閉ざすことになる。
勘違い?
これらの意見は、それぞれ一理あると言えますが、プログラミング教育に対する誤解や偏見も含まれていると言えます。
そこで、次の項では、プログラミング教育に対するよくある勘違いを解説していきます。
「プログラミング教育」に対する勘違い?
プログラミング教育に対するよくある勘違いは、以下のようなものです。
・プログラミング教育とは、コードを書くことだけを教えることである。
・プログラミング教育とは、子どもたちをプログラマーにすることである。
・プログラミング教育とは、難しい数学や理科が必要なことである。
・プログラミング教育とは、特別な才能や興味が必要なことである。
これらの勘違いは、プログラミング教育の本質や目的を見誤っていると言えます。
実際には、
・プログラミング教育とは、コードを書くことだけではなく、問題を分析し、解決策を考え、実現するプロセスを学ぶことです。コードはその手段の一つであり、ビジュアルプログラミング言語やブロック型プログラミング言語など様々な方法があります。
・プログラミング教育とは、子どもたちをプログラマーにすることではなく、プログラマー以外の職業でも役立つスキルや知識を身につけさせることです。例えば、論理的思考や創造的思考、コミュニケーション力や協働力などです。
・プログラミング教育とは、難しい数学や理科が必要なことではなく、子どもたちのレベルに合わせた内容や難易度で行うことです。例えば、絵本やカードゲームなどを使ってプログラミングの基本概念を学んだり、日常生活や社会の問題に関連したテーマを扱ったりします。
・プログラミング教育とは、特別な才能や興味が必要なことではなく、子どもたちの好奇心や探究心を刺激することです。例えば、自分の好きなキャラクターや動物を動かしたり、自分の作ったゲームやアプリを友達に見せたりします。
これらのことから、プログラミング教育は、子どもたちに楽しく学べるものであり、誰にでもできるものであると言えます。
必修化の目的
プログラミング教育必修化の目的は、子どもたちにプログラミング技術や思考力を身につけさせることだけではありません。
それ以上に、子どもたちに自分の可能性を広げさせることです。
プログラミング教育を通して、子どもたちは以下のようなことを体験できます。
・自分のアイデアを形にすること
・自分の作品を他者に発表すること
・自分の作品に対するフィードバックを受けること
・自分の作品を改善すること
・他者と協力して作品を作ること
これらの体験は、子どもたちに自信や達成感を与えるだけでなく、自己肯定感や自己効力感を高める効果があります。
また、これらの体験は、子どもたちに自分の興味や関心を見つけさせるだけでなく、自分の将来や夢を考えさせる効果があります。
つまり、プログラミング教育必修化の目的は、子どもたちに自分らしく生きる力を育てることです。
まとめ
この記事では、プログラミング教育の必修化に関する背景や目的、国内外の現状や反応、よくある勘違いなどについて解説しました。
プログラミング教育必修化は、日本の教育史において画期的な出来事であり、子どもたちに多くのメリットをもたらす可能性があります。
しかし、その実現には、ICT環境や教員の研修などの整備が必要です。
また、プログラミング教育に対する誤解や偏見を払拭し、正しい理解や支持を広げることも必要です。
プログラミング教育必修化は、子どもたちだけでなく、私たち大人にとってもチャンスです。

